柔らかな頬

the3rdeye2006-01-26

桐野夏生さんの「柔らかな頬」を読み終わりました。
この本はなんと言うか、小説として解決していない。ように見える。幼女の失踪事件を扱ったものなのだがその犯人はわからないまま。途中カスミと内海の夢という形をとってそれっぽい描写があるけど、結局は夢。読者が知りたい「真実」がわからないままだ。
当事者にとっての真実は、娘がいなくなった事と、その喪失を抱え、生きていかなくちゃいけない事。それだけ。誰がやったとかそういうのはどうでもいい事なのかもしれない。大切な人いなくなった事実を受け止めて生きていけるようになれば解決なんだろう。
誰が犯人で動機な何でトリックはこうで死体の隠し場所はここで。。。読者が求めるカタルシスを一切排除して、生身の(かなり変な)女性が喪失を受け入れるまでを描いている。これは相当に強い作品だ。